はじめての車中泊回想記:遭難しかけた

ショートトリップ集

はじめて”車中泊”というものを意識して旅に出たのは20代の頃のことだ。

学生時代最後を締め括るための、いわゆる卒業旅行としてだった。

周りの友達は皆こぞって海外旅行に出掛けて行ったが、僕は一人、車中泊で東北を巡った。

基本的には下道だけを利用し、東京から新潟を経由して青森まで行き、太平洋側を南下して東京に戻るルートで、1週間程度の旅だった。

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↑暗くてわかりにくいが、17号をひたすら北上した湯沢付近。

この時の車は、ディスカバリー1の1998年モデル。

ランドローバーが創立50周年を記念してリリースしたモデルで、特別色のアトランティスブルーというボディカラーが大好きだった。

この色、見る角度や光の当たり具合によって、緑にも見えたり青に見えたりする。

4L V8で燃費は悪かったけど、なんともゆったりしたエンジン・サスペンションで、まさに“味”のある車だった。

この時既にランドローバーの魅力にドップリとハマり込んでいて、今もその世界から抜け出せなくなっている。

“車の中にいる”ことが、ただそれだけでこんなにも安心感を抱ける車って他にあるだろうか。

↑早朝、秋田の県道。自分でバンパーを外して付けたナッジバーとフォグがなんともいい味を出している。(ような気がする・・・。)

とにかく冬の東北路を、ただのんびりと旅した。

青森では、そのまま北海道まで足を伸ばしたいという衝動を抑えながら、八甲田山を通って南下し、その後太平洋を目指し八戸まで横断した。

途中、地図で見つけた林道に立ち寄ったりもした。

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ここで見つけたのが福島にある鯖湖湯だ。

飯坂温泉にある一番古い温泉らしかった。

何にも縛られず、好きな時に好きな場所に立ち寄れるのが車中泊旅のいいところだ。

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時刻は夜中の12時過ぎだっただろうか。

地図で見つけた細い道を、面白そうだと興味本位で入ってみたところ、深い雪に阻まれスタック。。。

前にも後ろにも動けなくなってしまった。

場所は会津高原の奥で、辺りは静寂の闇のみ。

携帯電話の電波も圏外だった。

AMラジオから聞こえてくる外国語の放送が妙に孤独感を加速させた。

慌ててチャンネルを変えると、唯一通じた局から流れてきたのは当時流行っていた青山テルマの‘ここにいるよ’で、今でも印象に残っているし、聞くたびに勇気を与えてくれる。

しばらく奮闘してみたものの状況は好転せず、その晩は諦めて車中泊をすることにした。

まあ食料は積んでいないが、燃料はまだあるし携行缶にも燃料は入っていた。

最悪は、朝になれば麓まで歩くことも出来るだろうし、手持ちの小さなシャベルで雪を掻いたり、エンジンの熱で溶かしてみたりするのも楽しいかもしれないと、持ち前の楽観的観測でやり過ごした。

翌朝の写真

結局、シャベルで雪を掻き、車体を何度も前後に揺すりながら、1時間くらいかかって、なんとか無事に脱出することができた。

そんなこんなで、すっかり相棒となったDiscovery。

今でも本気で全く同じモデルを、機会さえあればまた欲しいと思っている。

この愛車には、後に、思いも寄らない形で別れを告げられることになるのだが。。。

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